真夏の停電に備える暑さ対策|本当に体を冷やす方法と冷却グッズ
──「ひんやりする」だけでなく、停電時に体から熱を逃がすための備え

凍らせたペットボトルは、飲料と冷却の両方に使えると案内されています。出典:厚生労働省「エアコンが使用できないときの熱中症対策」
📑目次
1.🏛️公的機関が示している停電前の備え
厚生労働省・経済産業省・環境省が公表し、日本救急医学会が監修した「エアコンが使用できないときの熱中症対策」では、平常時の備えとして次の内容が記載されています。(出典:[1])
- 飲料や非常用トイレなどを備蓄する
- 浴槽やポリタンクに水をためておく
- 水をペットボトルに入れて凍らせておく
同資料では、凍らせた水入りペットボトルは、停電時に飲料にも冷却にも使えると案内されています。
停電時には断水が起こる可能性もあるため、飲むための水と、体を冷やすための生活用水を事前に準備します。(出典:[1])
2.🎭「涼しく感じる」と「体を冷やす」は別
冷却グッズを選ぶときに注意したいのは、冷たく感じるだけでは、体にたまる熱を十分に減らせるとは限らないことです。
たとえば、製品の表面や風の吹出口が冷たくても、皮膚の一部が一時的に冷えるだけで、深部体温の上昇を抑えられるとは限りません。
ここを区別せずに「冷たいから熱中症対策になる」と考えると、危険な暑さの中で無理をしてしまう可能性があります。
冷却グッズの研究では、単に「涼しく感じたか」だけでなく、次のような変化が確認されています。
- 深部体温の上昇を抑えたか
- 皮膚温を下げたか
- 心拍数や発汗など、体への負担を軽減したか
- 暑い環境で安全に活動できる時間が延びたか
冷却ベストなどには、保冷剤やPCMを使うもの、冷水を循環させるもの、汗や水の蒸発を利用するもの、ファンで送風するものなどがあります。ただし、どの方式でも同じ効果が得られるわけではなく、気温、湿度、使用時間、体を動かしているかどうかによって結果が変わります。(出典:[4][5])
⚠️ 商品の「マイナス○℃」だけで判断しない
商品ページに「体感温度マイナス○℃」「冷却面が○℃」「吹出口が○℃」と表示されていても、それは深部体温が同じだけ下がるという意味ではありません。
商品を選ぶときは、次の点を確認してください。
- 何の温度を測定したのか
深部体温、皮膚温、製品表面温度、吹出口温度のどれか - どのような環境で試験したのか
気温、湿度、使用時間、安静時か活動中か - 誰を対象に試験したのか
年齢、健康状態、人数 - 誰が試験したのか
メーカー独自試験か、第三者による研究か
✅ この章の結論
冷却グッズは、「冷たく感じるか」ではなく、「体から実際に熱を奪える仕組みがあるか」で選ぶことが重要です。
ただし、実際に冷却効果がある製品でも、冷たさが続く時間や使用できる環境には限界があります。真夏の停電時は、冷房の代わりとして過信せず、冷房が使える場所へ移動するまでの補助的な対策として考えてください。
3.✅冷却グッズは何を選ぶ?4タイプを比較
冷却グッズにはさまざまな種類がありますが、すべてが同じ仕組みで体を冷やすわけではありません。
停電対策として選ぶときは、冷たく感じるかだけでなく、体から熱を奪う仕組み、効果が続く時間、冷凍庫・水・電池の必要性、停電後に再使用できるかを確認します。(出典:[4][5])
💡先に結論
高価な冷却機器を一つ用意するより、水を使った冷却、電池式の送風、室温の確認、冷房が使える場所への移動計画を組み合わせる方が、長引く停電に対応しやすくなります。冷却グッズは、移動までの時間を補うための用品として考えてください。
| タイプ | 主な仕組み | 停電時の利点 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 冷感タオル | 水の蒸発を利用するタイプと、接触時の冷たさや清涼感を主とするタイプがある | 水で濡らすタイプは、うちわやファンと組み合わせて繰り返し使いやすい | 高湿度や無風では水が蒸発しにくい。接触冷感やメントールだけでは、持続的な冷却とは限らない |
| ネックリング | PCMなどの材料が溶ける間、首周辺の熱を吸収する | 電池が不要で、装着しやすい | 冷却範囲が首周辺に限られる。温まった後に、冷蔵庫や冷水などで再冷却できるか確認が必要 |
| 冷却ベスト | 保冷剤、PCM、冷水の循環、水の蒸発などを利用して胴体を冷やす | ネックリングより広い範囲を冷やせる製品がある | 方式によって冷凍庫、氷、冷水、電池が必要。重さ、使用時間、一人で着脱できるかも確認する |
| ファン付き衣服・電池式ファン | 風によって、汗や皮膚につけた水の蒸発を促す | 電池があれば継続して送風でき、ファン付き衣服は比較的広い範囲へ風を送れる | 室温そのものは下がらない。乾いた皮膚への送風だけに頼らず、皮膚を濡らす方法と組み合わせる |
🧣冷感タオル
「冷感タオル」という名称でも、冷たく感じる仕組みは製品によって異なります。
水で濡らして使うタイプは、水が蒸発するときに体から熱を奪います。うちわや電池式ファンで風を当て、乾いてきたら再び濡らすと、蒸発を続けやすくなります。
一方、接触した瞬間の冷たさやメントールによる清涼感を主とする製品は、涼しく感じても、体にたまる熱を十分に減らせるとは限りません。
水で濡らして使えるか、風と組み合わせられるかを確認してください。
⭕ネックリング
PCMなどを使ったネックリングは、材料が固体から液体へ変化する間、首周辺から熱を吸収します。そのため、完全に「感覚だけ」の製品ではありません。
ただし、冷やせる範囲は首周辺に限られます。ネックリングだけで全身の体温上昇を防ごうとせず、濡れた皮膚への送風や、冷房が使える場所への移動と組み合わせる補助用品として考えます。
購入前には、冷却が続く時間と、温まった後に何℃の環境で再び固まるのかを確認してください。停電中の室温や水温では再冷却できない製品もあります。
🦺冷却ベスト
冷却ベストには、凍結した保冷剤を入れるタイプ、PCMを使うタイプ、冷たい水を循環させるタイプ、水の蒸発を利用するタイプなどがあります。(出典:[4][5])
胴体を比較的広く冷やせることが利点ですが、方式ごとに必要な物が異なります。保冷剤式は冷凍庫、水循環式は冷水とポンプ用電源、気化式は水と蒸発しやすい環境が必要です。
また、研究対象者の多くは健康な成人や暑い環境で働く人であり、高齢者が停電した住宅で一人で使う条件とは異なります。
冷却性能だけでなく、本人が取り出し、着て、効果が切れたときに自分で外せるかを確認してください。
🌬️ファン付き衣服・電池式ファン
ファンは室温を下げるのではなく、皮膚の近くにある空気を動かし、汗や水の蒸発を促すために使います。
停電時には、濡れたタオル、霧吹き、水浴びなどで皮膚を濡らしてから風を当てます。皮膚が乾いてきたら、もう一度濡らしてください。(出典:[1][7])
ファンを使わない方がよいのではなく、ファンだけに頼らないことが重要です。極端に高温の環境では、乾いた皮膚へ熱い空気を送り続けても十分な冷却にならない場合があります。室温が下がらないときは、冷房が使える場所への移動を優先してください。
🔍購入前に確認すること
- 体から熱を奪う仕組みがあるか
- 「マイナス○℃」は、何の温度を測定した表示か
- 冷却が続く時間
- 冷凍庫、氷、冷水、電池のどれが必要か
- 停電後に再使用できるか
- 本体、冷却材、電池を含めた総重量
- 高齢者が一人で装着、停止、取り外しできるか
- 試験時の気温、湿度、使用時間、対象者
- メーカー独自試験か、第三者による査読研究か
💡冷却グッズ選びの要点
冷たさの強さだけではなく、停電後も使い続けられるか、高齢者本人が安全に扱えるかまで確認します。
4.💧専用グッズがなくてもできる水冷却の備え
水道が使える場合は、特別な冷却機器がなくても、皮膚を濡らして風を当てる方法や、手と前腕を水へ浸す方法を利用できます。(出典:[1][6][7])
⚠️これは移動までの一時的な対策です
水やファンを使った冷却は、冷房が使える場所へ移動するまで、体温の上昇を抑えるための一時的な対策です。暑い室内にとどまり続けるための方法ではありません。
🧰平常時にまとめておきたい物
| 準備する物 | 使い道 |
|---|---|
| 薄手のタオル | 腕、脚、首まわりなどの皮膚を濡らす |
| 霧吹き | 皮膚を少量の水で繰り返し濡らす |
| うちわ・電池式ファン | 濡れた皮膚へ風を当て、水の蒸発を促す |
| 手と前腕が入る広口容器 | 手と前腕を水へ浸す |
| 安定した椅子と低い台 | 前かがみや転倒を防ぎながら水冷却を行う |
| 滑り止め・吸水マット | こぼれた水による転倒を防ぐ |
| 飲料水と生活用水 | 飲水用と冷却用を分けて確保する |
| 室温・湿度計 | 室内の暑さが続いていないか確認する |
🌬️皮膚を濡らして風を当てる
- 活動を止め、衣服をゆるめる
- タオルや霧吹きで、腕、脚、首まわりなどの皮膚を濡らす
- うちわや電池式ファンで風を当てる
- 皮膚が乾いてきたら、もう一度濡らす
水を含ませたタオルを巻いたままにするだけでは、タオルが体温で温まることがあります。温かくなったら濡らし直し、可能であれば風を組み合わせてください。
👐手と前腕を約20℃の水に浸す
浴室まで移動しにくい場合は、椅子に座り、両手と前腕を水へ浸す方法もあります。高齢者を対象とした研究では、約20℃の水へ手と前腕を浸すことで、深部体温や心拍数の上昇が抑えられました。(出典:[6])
研究で用いられた手順は、次のとおりです。
- 安定した椅子に座る
- 両手と前腕を、肘の近くまで約20℃の水に10分間浸す
- 水から出して20分間休む
- もう一度、10分間水に浸す
氷水を使う必要はありません。容器は膝の上ではなく安定した台へ置き、下に滑り止めや吸水マットを敷きます。水がぬるくなった場合は交換してください。
🚱水が限られている場合
断水している場合は、飲料水を大量に冷却へ使わず、飲むための水を優先してください。残っている冷源を使いながら、早めに冷房が使える場所へ移動します。
本人の受け答えがおかしい、自力で水を飲めない、歩けない、けいれんがあるなどの場合は、家庭の冷却方法だけで様子を見ず、119番へ連絡してください。(出典:[2])
5.🧊凍らせたペットボトルを準備する
公的機関の資料で示されている備えの中でも、凍らせた水入りペットボトルは、停電直後に使いやすい冷源です。電池や専用機器がなくても使え、溶けた後は水として利用できます。(出典:[1])
✅凍結ペットボトルの利点
- 停電直後から冷却に使える
- 電池や専用の装置を必要としない
- クーラーボックスへ入れ、ほかの飲料や冷却材を冷たい状態に保ちやすくする
- 飲用できる水を凍らせておけば、溶けた後に水分補給へ使える
🧺使うときは布で包む
凍結したペットボトルを肌へ直接、長時間当て続けると、皮膚を傷めるおそれがあります。薄手のタオルなどで包み、同じ場所へ固定し続けず、皮膚の状態を確認しながら使ってください。
首、脇の下、足の付け根などを冷やす方法は応急処置でも用いられますが、小さな冷源を数か所へ当てるだけで全身を十分に冷やせるとは限りません。濡れた皮膚への送風など、ほかの方法と組み合わせます。(出典:[1][2])
高齢者は冷たさや痛みに気づきにくい場合があります。糖尿病による神経障害、末梢循環の問題、皮膚が弱い人は、家族などが皮膚をこまめに確認してください。
⏳冷源は停電後に補充できない
凍結ペットボトルや保冷剤は、冷たい間は体から熱を吸収します。しかし、停電中に冷凍庫が使えなければ、溶けた後に再び凍らせることはできません。
- 冷凍庫の扉を何度も開けず、必要な分だけ取り出す
- 使わない冷源はクーラーボックスなどへ移して保冷する
- 複数本を用意しても、それだけで長時間の停電を乗り切る計画にはしない
- 冷源が残っている間に、連絡と移動の準備を進める
💡この章の結論
高価な冷却用品を購入する前に、まず凍らせた水入りペットボトルを準備します。ただし、冷たさが続く時間には限りがあるため、冷房が使える場所へ移動するまでの冷源として使用してください。
6.📞冷却グッズより先に、連絡先と移動先を決める
⚠️冷却グッズはエアコンの代わりではありません
冷却グッズや水を使った方法は、停電した暑い家へ長時間とどまり続けるためのものではありません。真夏の停電が長引く場合は、冷房が使える場所へ移動することを基本にします。(出典:[1])
冷却グッズを準備するときは、「何を買うか」だけでなく、停電したら誰へ連絡し、どこへ、どのように移動するかまで家族で決めておきます。
🏢候補となる移動先
- 冷房が使える親族や知人の家
- 自治体が案内する公共施設や涼みどころ
- 利用可能な商業施設
- 指定暑熱避難施設(クーリングシェルター)
- 災害時に開設され、冷房が使用できることを確認した避難所
アラートが発表されていなくても、室内が高温になっている、停電の復旧見込みが分からない、本人の体調や移動能力に不安がある場合は、早めの移動を検討します。
📝家族で決めておく項目
| 決めること | 確認する内容 |
|---|---|
| 最初の連絡先 | 停電した本人が最初に電話する家族や近隣協力者 |
| 連絡する順番 | 電話がつながらない場合に、次に誰へ連絡するか |
| 移動先の第1・第2候補 | 開放時間、休館日、停電していないか、冷房が使えるか |
| 移動手段 | 徒歩、家族の迎え、タクシーなど、本人の体力に合う方法 |
| 一人で移動できない場合 | 誰が迎えに行くか、近隣へ協力を頼めるか |
| 持ち出す物 | 飲料、薬、携帯電話、充電器、身分証、冷却用品 |
| 持病への対応 | 水分や塩分の制限、服薬、医療機器の電源について事前に確認する |
| 救急要請の条件 | 受け答えがおかしい、自力で飲めない、歩けない、けいれんなどがあれば119番 |
⏰症状が出てからではなく、動けるうちに移動する
高齢者は、暑さやのどの渇きを自覚しにくいことがあります。体調が悪化してから移動しようとしても、歩行や判断が難しくなる可能性があります。
停電が長引く見込みがある、室温が上がり続けている、一人での移動に時間がかかる場合は、冷却グッズの効果が切れるまで待たず、本人が会話や歩行をできる段階で移動を始めます。
📝まとめ
真夏の停電に備えて、まず公的機関の資料に明記されている物を準備します。
- 飲料
- 非常用トイレ
- 浴槽やポリタンクにためる生活用水
- 凍らせた水入りペットボトル
- 濡れたタオル
- うちわ
冷却ベストなどには複数の方式があり、体温や心拍数の改善が確認された条件もあります。ただし、方式、気温、湿度、活動内容によって結果が異なります。
購入時は、冷却方式、冷凍・電池・水の必要性、再使用条件、重さ、使用時間を確認してください。
※実際に停電が発生したときの対応は、関連記事「真夏の停電でエアコンが止まったら?今すぐ行う暑さ対策」で紹介しています。
🔔 お知らせ
毎日の短い応答を家族で確認する「みまもライフ」
高齢者見守りサービス「みまもライフ」は、決めた時刻に本人が短い応答を行い、その状況を家族で確認するサービスです。
停電検知や室温測定を行うサービスではありません。停電時の連絡先、応答がない場合の確認手順、冷房が使える場所への移動方法を家族で決める際の選択肢としてご覧ください。
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公的機関
- [1] 厚生労働省・経済産業省・環境省・日本救急医学会「エアコンが使用できないときの熱中症対策」
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/nettyuu_taisaku/pdf/aircon.pdf - [2] 厚生労働省「熱中症が疑われる人を見かけたら」
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/nettyuu_taisaku/happen.html - [3] 総務省消防庁「熱中症対策リーフレット」
https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/items/heatstroke003_leaflet.pdf - [8] 環境省熱中症予防情報サイト「指定暑熱避難施設(クーリングシェルター)・リンク集」
https://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_shelter.php
研究資料
- [4] 冷却ベストは体温や心拍数、暑さの感じ方を改善できるか
Golbabaei F, et al., International Journal of Occupational Safety and Ergonomics, 2022.
研究内容を確認する - [5] 冷却衣類の種類によって効果や使いやすさはどう違うか
Tetzlaff EJ, et al., American Journal of Industrial Medicine, 2025.
研究内容を確認する - [6] 高齢者の手と前腕を約20℃の水に浸す冷却方法
Cottle RM, et al., Experimental Physiology, 2025.
研究内容を確認する - [7] 極端な暑さの中で、高齢者が扇風機を使った場合の影響
JAMA Network Open, 2025.
研究内容を確認する
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