思いがけない借金

知らぬ間に背負う“負債付き相続” ― 3か月の壁と家族を守る備え―

【重要な免責事項】 本記事は 2025年6月時点 の法令・制度に基づく一般的な解説です。今後の法改正や個別事情によって取り扱いが変わる可能性があります。地域や各窓口の運用も異なるため、最終的な判断や申請手続きは必ず 弁護士・司法書士・税理士などの専門家 へご相談ください。

【重要な注意事項】 本記事では分かりやすさを優先し、一部の例外規定や詳細要件を省略しています。読者の資産状況・家族構成によっては別の方法が適切な場合があります。

投稿:思いがけない借金

事例: 父が亡くなって4か月ほど経ったころ、銀行から突然電話がありました。
「お父様のお借入について、ご返済が滞っているためご連絡差し上げました」——。
父の死去を伝えると、担当者はこう続けました。
「そうなりますと、恐らくご相続人様が返済を引き継ぐ形になります。」
しかし、相続放棄を申し立てられる3か月の熟慮期間(民法915条)はすでに過ぎており、家族は債務を背負わざるを得ませんでした。

こうした"負債付き相続"は珍しくありません。

  • NHK『クローズアップ現代+』(2019/12/19放送「"突然相続"ある日あなたにも!?」)では、期限に間に合わず借金を引き継いだ遺族の事例が報じられています。
  • 朝日新聞社「相続会議」(弁護士監修記事、2023/02/20公開)では、負債の存在を知らずに熟慮期間を超えてしまい、やむなく返済義務を負ったケースが紹介されています。

相続開始後に判明した借金 ― よくある原因

原因説明
負債の隠匿故人が家族に借金を知らせていなかった。
調査不足通帳・カード明細・信用情報を確認せずに相続手続きを進めた。
書類散逸ローン契約書や督促状が整理されず、発見が遅れた。

【解説】相続放棄、限定承認とは?

項目相続放棄限定承認
内容資産も負債も一切引き継がない。相続財産の範囲内で負債を弁済し、残れば受け取る。
申述期限相続開始と自分が相続人であることを知った日から3か月以内(民法915条)。同左(3か月以内)
手続主体個々の相続人が単独で可能。相続人全員で共同申述が必要。
メリット返済義務ゼロで確実に債務を回避。資産超過ならプラス分を受け取れる可能性。
デメリット資産も放棄。次順位の親族に債務が移る場合あり。手続きが複雑で公告コストもかかる。負債が多いと最終的にゼロになることも。

【ポイント】熟慮期間を過ぎたら?

熟慮期間を過ぎると単純承認(資産も負債も全承継)扱いになり、後からの撤回は極めて困難です(参考:裁判所公式「相続放棄の申述」法務省「限定承認」ガイド)。


【ポイント】3か月経過後でも放棄できる?

"3か月を過ぎたら絶対に放棄できない"わけではありません。「知らなかった」「調べようがなかった」ことを具体的に立証できれば、家庭裁判所が相続放棄を受理する余地があります。

ただし、相続財産を処分したり遺産分割に参加した場合は単純承認とみなされ、後からの放棄は原則できません(民法921条)。

【注意】3か月超過時の実務

  • 「銀行が知らせてくれなかったから3か月を過ぎた」という主張だけでは不十分です。負債を知らなかった合理的理由(例:督促状が届かなかった、被相続人と長年別居で情報取得が極めて困難など)を客観的に示す必要があります。
  • 相続人には財産・負債を調査する義務があると解されており、通帳や信用情報を確認せずに放置していた場合は救済が認められにくくなります。
  • 3か月以内に全容を把握できないと分かった時点で、家庭裁判所へ熟慮期間伸長の申立て(民法915条2項)を検討しましょう。

負債を含めた資産整理の重要性

チェック項目具体策
ローン契約の把握金融機関へ残高証明書を請求し、契約書を保管。
クレジットカード直近の利用明細・リボ残高を確認し、カード会社へ問い合わせ。
信用情報CIC・JICC(※1)等で本人開示請求し、借入残高や延滞情報を確認。
税・公共料金納付書・督促状の有無を確認し、未納がないか点検。
個人間借入借用書・送金記録を整理し、口頭契約の有無もヒアリング。

※1:信用情報機関について

  • CIC(指定信用情報機関)JICC(日本信用情報機構)は主要な個人信用情報機関です。
  • クレジットカードや消費者ローンの利用状況・返済履歴を収集・管理し、加盟金融機関の審査に提供しています。
  • 相続人でも戸籍謄本や死亡診断書などを添えて本人開示請求(オンライン・郵送可)を行えば、故人の借入残高や延滞履歴を把握できます。
  • 住宅ローンなど銀行系の情報は全国銀行個人信用情報センター(KSC)が管理するため、必要に応じてKSCへも請求してください。

【アドバイス】財産調査チェックリスト

  1. 信用情報機関(CIC・JICC・全国銀行個人信用情報センター)で故人の情報を開示請求し、隠れローンを洗い出す。
  2. 郵便物・メールを1〜2年分遡って確認し、ローン会社や督促状、カード利用明細がないか探す。
  3. 金融機関の入出金履歴(通帳・ネットバンキング)を5年程度遡り、定期的な返済引き落とし口座を特定。

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参考・出典一覧

  1. 裁判所公式サイト「相続放棄の申述」
  2. 法務省民事局「限定承認」解説ページ

引用について: 本記事中の引用は、日本の著作権法第32条が定める「引用」の要件を満たす範囲で行っています。

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