熱中症の救急搬送、実は過去最多の10万人超え|離れて暮らす高齢の親を見守る方法
── 救急搬送者の57%は高齢者。気づきにくさの理由と、家族にできること

📑目次
1.📊令和7年、熱中症搬送は「過去最多」に
総務省消防庁の確定値(2025年10月29日発表)によると、令和7年5〜9月の熱中症による救急搬送人員は次の通りでした。
| 年齢区分 | 搬送人員 | 構成比 |
|---|---|---|
| 高齢者(65歳以上) | 57,433人 | 57.1% |
| 成人(18〜64歳) | 34,096人 | 33.9% |
| 少年(7〜17歳) | 8,447人 | 8.4% |
| 乳幼児・新生児 | 534人 | 0.5% |
高齢者の割合は過去5年間、いずれの年も半数を超えており、令和7年も57.1%と高い水準が続いています。搬送者のうち、入院が必要とされた「中等症」は34.2%、長期入院が必要とされた「重症」は2.2%で、合計36.4%でした。また、初診時に死亡が確認された人は117人でした。
出典:総務省消防庁「令和7年(5月〜9月)の熱中症による救急搬送状況(確定値)」
出典:総務省消防庁「令和7年(5月〜9月)の熱中症による救急搬送状況(確定値)」
発生場所別では、「住居」が38,292人(38.1%)ともっとも多く、屋外や公共の場所を含むあらゆる区分の中でトップです。熱中症は炎天下だけでなく、自宅の中でも起きているというのが実態です。
出典:総務省消防庁「令和7年(5月〜9月)の熱中症による救急搬送状況(確定値)」
2.🤔 なぜ高齢者は「気づけない」のか
高齢者の熱中症が多い背景には、加齢による身体的な変化があります。環境省・厚生労働省の資料では、主に次のような点が指摘されています。
▼暑さを感じにくくなる
皮膚の温度センサーの感度が低下するため、室温が上がっていても、本人が「暑い」と自覚しにくくなることがあります。
▼喉の渇きを感じにくくなる
体内の水分が減っていても、「渇中枢」の感度低下により、のどの渇きとして自覚されにくいことがわかっています。
▼体内の水分量そのものが少ない
若年層では体重の約60%を水分が占めるのに対し、高齢者では50〜55%程度まで低下します。腎機能の低下もあり、慢性的に脱水傾向になりやすい状態です。
▼汗をかきにくく、熱がこもりやすい
発汗や皮膚血流量の増加による放熱反応が遅く、体に熱がたまりやすくなります。
▼持病や認知機能の影響
糖尿病や腎機能低下がある場合はさらにリスクが高まり、認知機能の低下がある場合は、水分補給や室温調整といった行動そのものが難しくなることがあります。
つまり、高齢者本人が「大丈夫」と感じていても、体の中では危険な状態が進行していることがある、というのがポイントです。
出典:環境省・厚生労働省「熱中症予防リーフレット(高齢者向け)」/環境省「熱中症環境保健マニュアル」
3.❄️ 「エアコンがあるのに、使わない」という実態
この「気づきにくさ」を裏付けるデータが、東京都監察医務院が公表した令和7年夏の熱中症死亡者数の統計(東京都23区・確定値)にあります。
屋内で亡くなった181人のうち、エアコンが設置されていた人は149人(82.3%)でした。しかし、そのうち実際に使用していたのは28人にとどまり、121人は設置されていながら使用していませんでした。エアコンが設置されていなかった人は23人です。「使用していなかった人」と「設置されていなかった人」を合わせると144人となり、屋内死亡者の79.6%にのぼります。
出典:東京都監察医務院「令和7年夏の熱中症死亡者数の状況【東京都23区(確定値)】」
さらに、エアコンを設置していながら使っていなかった121人のうち、107人が一人暮らしでした。同居する家族がいない環境では、室内の状況や体調の変化に周囲が気づきにくい可能性があることがうかがえます。
また、同院の別の統計(令和2年)では、熱中症による死亡者のうち約3割が夜間に発生しています。就寝中は自覚症状に気づきにくく、発見が遅れやすい時間帯といえます。
出典:東京都監察医務院「令和7年夏の熱中症死亡者数の状況【東京都23区(確定値)】」/環境省「熱中症関係省庁連絡会議」資料
4.💭 「自分は大丈夫」——親と子の間にある認識のギャップ
ここからは民間の意識調査からわかることです(公的統計ではなく、あくまで調査会社によるアンケート結果としてご紹介します)。
株式会社LIFULL seniorが2025年6月に発表した調査では、親世代・子世代それぞれに行ったアンケートで回答の傾向に違いが見られました。別居する子世代の約3割が「親がエアコンを使っていないのでは」と心配している一方、親世代の約8割は「自分はエアコンを使用している」と回答しています(親子で同じペアを比較した調査ではなく、それぞれ別の回答者への調査です)。
またパナソニック株式会社の調査(20〜60代が対象)では、回答者全体の41%が「我慢できるときは消す・ほぼ使わない」と回答しています。60代以上でエアコンの使用を控える理由としては、「冷えすぎるから」「体に悪いと思うから」「風が直接当たるのが嫌だから」といった声が挙がっています。
これらはあくまで民間企業によるアンケート調査ですが、「本人は大丈夫だと思っている」ことと、「実際には危険な状態にある」ことの間にギャップが生まれやすい構造は、先述の医学的な背景とも符合しています。
出典:株式会社LIFULL senior「高齢の親の熱中症に関する意識調査」(2025年6月)/パナソニック株式会社「エアコン利用アンケート」(2022年6月)※いずれも民間調査
5.✅家族にできること
環境省・厚生労働省・消防庁は、高齢者本人への声かけとして、次のような呼びかけを行っています。
- のどが渇いていなくても、時間を決めてこまめに水分・塩分を補給する
- 本人の感覚だけに頼らず、温湿度計や暑さ指数(WBGT)で室内の状況を客観的に確認する
- 無理な節電をせず、エアコンを積極的に使う(就寝時も含めて)
- 遮光カーテンやすだれで直射日光を防ぐ
高血圧や糖尿病、心疾患、腎疾患などの持病がある場合、水分・塩分の摂取量に制限が必要なことがあります。上記はあくまで一般的な目安であり、持病のある方は事前にかかりつけ医に相談することが推奨されています。
離れて暮らす家族が電話や訪問の際に確認できるポイントとして、厚生労働省などは以下のような項目を挙げています。
| 確認カテゴリー | チェック項目の例 |
|---|---|
| 体調 | 元気があるか、食欲は落ちていないか、発熱はないか |
| 身体の変化 | 急激な体重減少はないか、血圧・心拍数は安定しているか |
| 室内環境 | 一人の時間帯の過ごし方、室温・湿度、風通し、日当たり |
なお、「離れて暮らす家族はどのくらいの頻度で連絡すべきか」という点について、国や自治体が具体的な回数を示した公的なガイドラインは見当たりませんでした。参考として、セコム株式会社の調査(2020年3月)では、別居家族の連絡手段は「定期的な電話」が81.2%と最多で、頻度は「週に1回」がもっとも多いという結果が出ています。
夏の気温や熱中症警戒アラートは日によって大きく変わるため、週に1回程度の連絡だけでは、その日その時間帯の室内の状況までは把握しづらい面もあります。環境省が提供するLINE公式アカウントに登録し、親の住む地域に熱中症警戒アラートが出た日にタイミングよく連絡する、という工夫も呼びかけられています。
出典:厚生労働省・環境省「熱中症予防のための高齢者への見守り・声かけについて」/セコム株式会社「親の見守りについての調査」(2020年3月、民間調査)
6.🚑 熱中症が疑われるときの対応
ここまで予防と見守りについて解説してきましたが、実際に熱中症の症状が疑われる場面に出会うこともあります。厚生労働省は、次のような対応を呼びかけています。
💡もしものときは
もし、自力で水分を飲めない、意識がない、呼びかけへの反応がおかしい場合は、様子を見ず、すぐに救急車を呼んでください(119番)
7.📱毎日の電話が難しいときにできること
とはいえ、仕事や育児で忙しい中、毎日電話をかけ続けるのは簡単なことではありません。一方で、電話や訪問の頻度をただ増やすことだけが、必ずしも解決策になるとは限りません。
離れて暮らす親を見守る方法には、電話、訪問、室温センサー、見守りカメラ、通知への応答を確認するサービスなど、いくつかの選択肢があります。確認できる内容や親側の負担は方法によって異なるため、家庭の状況に合った方法を選ぶことが大切です。
※電話・訪問・センサー・カメラなどの違いについては、「離れて暮らす親をどう見守る?電話・訪問・見守りサービスの特徴と選び方」で詳しく比較しています。
※見守りを始める時期や親への伝え方については、「離れて暮らす親の見守りはいつから始める?」も参考にしてください。
暑さへの感じ方や喉の渇きへの感度は、加齢とともに静かに変化していきます。「元気そうだから大丈夫」という安心感の裏で、本人も気づかないうちに危険な状態が進んでいることがある——今回のデータは、そのことを教えてくれています。
🔔 お知らせ
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📚 参考文献・出典
一次ソース(公的機関)
- 総務省消防庁「令和7年(5月〜9月)の熱中症による救急搬送状況(確定値)」(2025年10月29日)
- 環境省・厚生労働省「熱中症予防リーフレット(高齢者向け)」
- 環境省「熱中症環境保健マニュアル」
- 東京都監察医務院「令和7年夏の熱中症死亡者数の状況【東京都23区(確定値)】」
- 厚生労働省・環境省「熱中症予防のための高齢者への見守り・声かけについて」
民間調査(二次情報)
- 株式会社LIFULL senior「高齢の親の熱中症に関する意識調査」(2025年6月)
- パナソニック株式会社「エアコン利用アンケート」(2022年6月)
- セコム株式会社「親の見守りについての調査」(2020年3月)
金融システムエンジニアとして20年以上、
大手金融機関向けシステム開発に従事した後、
現在は資産管理・相続に関する情報発信を行っています。
金融システムの現場で培った知識と、FP資格に基づく専門性を活かし、
複雑な税制や相続の仕組みを、公的資料に基づき正確かつ
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【保有資格】
2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)
証券外務員一種
応用情報技術者(AP)

