2重課税!?『税の上に税』の正体とは?高税率商品ランキングと複合課税を徹底解説



💡 この記事でわかること
✅ タバコ・ビール・ガソリンなど高税率商品トップ5
✅ なぜこれらの商品は税率が高いのか(3つの社会的目的)
✅ 「税の上に税」がかかる複合課税の仕組み
✅ 高税率商品を賢く付き合う方法
👥 こんな人におすすめ
✅ タバコ・お酒・車を日常的に利用している方
✅ 「なぜこんなに税金が高いの?」と疑問を持っている方
📑 目次
1. 🏆 高税率商品トップ5──価格の何割が税金?

タバコ以外にも、私たちが日常的に購入している商品の中には、価格の大部分が税金で占められているものがあります。2025年11月時点の代表的な価格で、税負担率を比較してみましょう。
💵 日常的に購入している商品の税負担率
高税率商品ランキング(消費段階のみ)
| 順位 | 🏷️ 商品 | 💴 価格(税込) | 💰 税額 | 📊 税負担率 |
|---|---|---|---|---|
| 🥇 1位 | タバコ(20本) | 600円 | 約360円 | 約60% |
| 🥈 2位 | ガソリン(1L) | 160円 | 約72円 | 約45% |
| 🥉 3位 | ウイスキー(700ml) | 2,000円 | 約800円 | 約40% |
| 4位 | ビール(350ml) | 250円 | 約87円 | 約35% |
| 5位 | 軽油(1L) | 140円 | 約49円 | 約35% |
※本ランキングの税負担率は、2025年11月時点の代表的な価格・税率を用いた概算です。銘柄や店舗により異なる場合があります。
🍺 ビール(350ml = 250円)の税率構造
ビール350mlの税額内訳
| 📋 項目 | 💴 金額 | 📊 割合 |
|---|---|---|
| 本体価格+流通 | 約163円 | 65.2% |
| 🍺 酒税 | 約63円 | 25.3% |
| 💳 消費税 | 約24円 | 9.5% |
| 💰 うち税金 | 約87円 | 34.8% |
ビールの場合、価格の約35%が税金です。タバコほどではありませんが、それでも高い税負担率となっています。
2026年の酒税改正 2026年10月には、ビール系飲料の酒税が統一されます。 ビール、発泡酒、新ジャンルすべて54.25円/350mlになります。
⛽ ガソリン(1L = 160円)の税率構造
ガソリン1Lの税額内訳
| 📋 項目 | 💴 金額 | 📊 割合 |
|---|---|---|
| 本体価格 | 約89円 | 55.5% |
| ⛽ 揮発油税 | 約49円 | 30.4% |
| 🏢 地方揮発油税 | 約5円 | 3.3% |
| 🛢️ 石油石炭税 | 約3円 | 1.8% |
| 💳 消費税 | 約15円 | 9.1% |
| 💰 うち税金 | 約72円 | 44.5% |
ガソリンの場合、価格の約45%が税金です。そのほとんどが固定税(定額課税)であるため、原油価格が変動しても税額は変わりません。
📝解説
「当分の間税率」とは?(2025年11月時点)
ガソリン税には、本来の税率(本則税率)に加えて「当分の間税率(暫定税率)」が上乗せされており、1リットルあたり25.1円の増税分が課されていました。
この暫定税率は2000年代以降20年以上続き「事実上の恒久措置」とされてきましたが、2025年12月31日をもって廃止されることが与野党6党で正式合意しています。 廃止後は本則税率28.7円/ℓを中心とした構成に戻る見込みです。 軽油引取税の暫定税率(17.1円/ℓ)も2026年4月1日に廃止予定です。
2. 🎯 なぜこれらの商品は税率が高いのか?

特定消費税(個別消費税)が課される商品には、3つの重要な目的があります。単なる「取りやすいところから取る」だけでなく、社会的な意義があります。
💰 1. 財源調達機能(税収確保)
高税率商品への課税は、国や地方自治体の重要な財源となっています。
主要な税収(2024年度):
・ タバコ税:約2.0兆円(国税・地方税合計)
・ 揮発油税:約2.3兆円
・ 酒税:約1.1兆円
これらを合計すると、年間で約5.4兆円の税収があり、これは国の一般会計税収(約70兆円)の約7.7%に相当します。
💡ポイント
タバコ税だけで、防衛費(約6兆円)の約3分の1を賄っています。 ガソリン税は道路整備や復興財源として使われています。
🚫 2. 消費抑制機能(健康・環境への配慮)
高い税率を課すことで、社会的に望ましくない消費行動を抑制する目的があります。
タバコ:健康被害の抑制
・ 肺がん、心疾患、脳卒中などのリスク低減
・ 受動喫煙による健康被害の防止
・ WHO(世界保健機関)も「たばこ税の引き上げ」を推奨
ガソリン:環境負荷の軽減
・ CO2排出量の削減
・大気汚染の防止
・ 公共交通機関や電気自動車への転換促進
酒類:アルコール依存症の予防
・ 過度な飲酒による健康被害の防止
・ アルコール関連疾患(肝臓疾患など)の予防
国際比較 多くの先進国でも、タバコ・酒・ガソリンには高い税率が課されています。 これは、「外部不経済」(自分の行動が他人に悪影響を与える)を 税金によって調整する「ピグー税」という経済学の考え方に基づいています。
⚖️ 3. 所得再分配機能
嗜好品への課税により、社会保障の財源を確保し、所得格差を是正する役割があります。
高所得者ほど負担が大きい構造:
・ 高所得者ほど嗜好品(タバコ・お酒・高級車)の消費額が大きい傾向
・ 低所得者の基本的な生活必需品には軽減税率(8%)を適用
・ 得られた税収を社会保障(年金・医療・介護)に充当
⚠️注意
ただし、タバコなどは低所得者も利用するため、 「逆進性」(所得に対する税負担率が低所得者ほど高くなる) という問題も指摘されています。
📊 税率が高い理由のまとめ
| 目的 | 内容 | 効果 |
|---|---|---|
| 💰 財源調達 | 国・地方の重要財源 | 年間約5.4兆円の税収 |
| 🚫 消費抑制 | 健康・環境への配慮 | 社会的コストの削減 |
| ⚖️ 所得再分配 | 社会保障の財源確保 | 格差の是正 |
これらの目的は相互に関連しており、単に「税金を取る」だけでなく、公衆衛生や環境保護、社会的公平性の実現といった、多面的な社会政策の一環として位置づけられています。
3. 🔄 「税の上に税」がかかる複合課税の仕組み

複合課税とは何か
日本の消費税制度には、「複合課税」という特殊な構造があります。これは、個別消費税(特定の商品にだけかかる税金)を含めた金額に対して消費税が課される仕組みです。
📝 注記
税務上、個別消費税と消費税の関係は法律上「二重課税」とはみなされません。個別消費税は「商品価格の一部」として扱われるためです。ただし、生活者の感覚としては「税の上に税」と感じられる構造になっています。
複合課税の流れ:
1️⃣ 本体価格が決まる
↓
2️⃣ 個別消費税(たばこ税、酒税など)が加算される
↓
3️⃣ (本体価格 + 個別消費税)の合計に対して消費税10%が課される
具体例:タバコの場合
タバコ600円の消費税約55円のうち、実は約30円分が「たばこ税に対する消費税」です。
国際比較:フランスも同様の構造
この複合課税の構造は、日本だけではありません。フランスなど欧州諸国でも同様の仕組みが採用されています。
フランスの例:
・ タバコ税を含めた価格に対してVAT(付加価値税、20%)が課される
・ EU諸国の多くで同様の構造を採用
📝解説
この仕組みにより、個別消費税が値上げされると、 消費税の徴収額も自動的に増加する効果があります。 政府にとっては「効率的な増税手段」となっています。
複合課税の財政的意義
政府にとってのメリット:
1. 自動増収効果:個別消費税を値上げすると、消費税も自動的に増収
2. 価格感度の低下:消費者は「税金が高い」と感じても、内訳までは意識しにくい
3. 税率改定の柔軟性:個別消費税だけを改定すれば、実質的な増税が可能
💡ポイント
複合課税は法律上「二重課税」とは見なされません。 個別消費税は「商品価格の一部」として扱われるためです。 ただし、実質的には「税の上に税」がかかっています。
4. 📅 2026年の税制改正で何が変わる?
2026年には、高税率商品に関する重要な税制改正が予定されています。
4.1. 🍺 酒税の統一(2026年10月)
ビール系飲料の税率が完全に統一されます。
酒税統一の内容
| 📋 品目 | 現行税額(2025年) | 2026年10月以降 | 増減 |
|---|---|---|---|
| ビール | 63.35円/350ml | 54.25円/350ml | -9.1円 |
| 発泡酒 | 46.99円/350ml | 54.25円/350ml | +7.26円 |
| 新ジャンル | 46.99円/350ml | 54.25円/350ml | +7.26円 |
💡ポイント
約30年にわたって存在した税率差が完全に解消されます。 新ジャンル(第三のビール)は価格競争力を失い、 市場は「本物のビール」への回帰が予想されます。
4.2. 🚬 たばこ税の増税(2026年4月〜)
防衛財源確保を目的として、たばこ税の増税が予定されています。
スケジュール:
・ 2026年4月:加熱式タバコが先行して増税(数十円程度)
・ 2027年4月以降:紙巻きたばこを含む全タバコで段階的に増税(合計30円程度)
⚠️注意
紙巻きたばこの本格増税は2027年度以降に先送りされました。 これは、消費者への直接的な負担を慎重に管理する 政府の戦略を示しています。
4.3.⛽ガソリン暫定税率の廃止(2025年12月31日)/軽油は2026年4月1日
2025年10月末、与野党6党(自民党、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党、公明党、共産党)が正式合意し、ガソリンの暫定税率(25.1円/ℓ)を2025年12月31日に廃止、軽油引取税の暫定税率(17.1円/ℓ)を2026年4月1日に廃止することが決定しました。
(2025年11月28日に参議院本会議で可決・成立しました。)
影響:
理論上は店頭価格の下落要因(ガソリン暫定分25.1円の削減)となります。ただし、現在の補助金(10円/ℓ)も段階的に廃止されるため、実質的な値下げ幅は約15円程度と見込まれています。また、原油価格・為替・流通コスト等の変動要因もあるため、実際の値下げ幅は不確実です。
経過措置:
価格の急激な変動を避けるため、政府は段階的な移行措置を実施します:
- 11月13日から:補助金を段階的に増額(2週間ごとに5円ずつ)
- 12月11日:補助金を暫定税率と同額(25.1円)まで引き上げ
- 12月31日:暫定税率と補助金を同時に廃止
💡ポイント
暫定税率は「当分の間」という名目で2000年代初期から20年以上続いていましたが、物価高対策として与野党が協力し、完全廃止という形で決着しました。
※ 最新情報の確認方法
制度改正による負担増は、毎年12月に公表される「税制改正大綱」で正式に決定されます。
公式情報源:
- 財務省:https://www.mof.go.jp/
- 国税庁:https://www.nta.go.jp/
- こども家庭庁:https://www.cfa.go.jp/
5. ❓よくある質問(FAQ)

Q1. 💼 会社負担の社会保険料は「自分の負担」と言えるの?
A. 経済学的には「本来労働者の給与になるはずだったお金」と考えられます。
会社にとっては人件費の一部であり、この負担がなければ給与を増やせる可能性があります。ただし、直接的に給与明細に現れるわけではないため、「自分の負担」という実感は持ちにくいでしょう。
実際、欧米の一部の国では、会社負担分も含めた「総人件費」を労働者に開示する制度があります。日本でもこのような透明性が高まれば、税・社会保険料の負担をより正確に理解できるようになるかもしれません。
Q2. 🔄 複合課税は二重課税では?
A. 法律上は「二重課税」とは見なされません。
個別消費税(たばこ税・酒税・ガソリン税など)は「商品価格の一部」として扱われ、その合計額に対して消費税が課される仕組みです。
ただし、実質的には「税の上に税」がかかっているため、負担感が大きくなります。この構造は、国際的にも一般的であり、フランスなどの欧州諸国でも採用されています。
Q3. 🌍 なぜ日本はこんなに税負担が重いの?
A. 主な理由は以下の3つです。
1️⃣ 社会保障費の増大
・ 高齢化による年金・医療費の増加
・ 2025年には団塊の世代が全員75歳以上に
2️⃣ 国民負担率の上昇
・ 2025年度の国民負担率は約48.8%
・ 税金と社会保険料を合わせた割合
3️⃣ 財政赤字の累積
・ 国債残高が1,000兆円を超える
・ 利払いだけで年間約10兆円
ただし、国際比較では、日本の国民負担率は先進国の中では中程度です。北欧諸国(50〜60%)よりは低く、アメリカ(約35%)よりは高い水準となっています。
Q4. 💡 高税率商品を避ければ節税になる?
A. 直接的な節税効果はあります。
タバコやお酒などの高税率商品を減らすことで、消費段階での税負担を減らすことができます。特にタバコの場合、年間で数万円〜十数万円の節約になる可能性があります。
ただし、税金は社会を支える重要な財源であり、適切な範囲での消費は問題ありません。むしろ、タバコやお酒を減らすことは健康面でのメリットも大きいと言えます。
健康面のメリット:
・ タバコ:肺がん、心疾患のリスク低減
・ お酒:肝臓疾患、アルコール依存症の予防
・ 長期的な医療費の削減
6. 📝 まとめ──高税率商品と賢く付き合う

📌 この記事のポイント
✅ 複合課税により実質的な税負担が増幅される
個別消費に対しても消費税が課される「税の上に税」構造
✅ 高税率商品には3つの社会的目的がある
財源調達、消費抑制、所得再分配
✅ 高税率商品を減らすことは節約にも健康にも良い
タバコ・お酒の消費を見直すことで、金銭的・健康的メリットがある
✅ ただし、税金は社会を支える重要な仕組み
警察、消防、教育、医療、社会保障など、私たちの生活を支えている
📚用語解説
※1 社会保険料(しゃかいほけんりょう)
健康保険、厚生年金、雇用保険、介護保険などの保険料の総称で、社会保障制度の財源となります。給与から天引きされる自己負担分と、会社が支払う会社負担分があり、将来の年金受給や医療費軽減という見返りがあります。
税金ではありませんが、強制徴収される点や使途が法律で規定されている点で、実質的には税金と同じ性質を持ちます。
具体例: 年収500万円の会社員の場合、自己負担約77.5万円、会社負担約81.7万円の合計約159万円が社会保険料として支払われています。
※2 複合課税(ふくごうかぜい)
個別消費税(たばこ税、酒税、ガソリン税など)を含めた金額に対して消費税が課される仕組み。つまり「税の上に税」がかかる構造です。
具体例: タバコの場合、たばこ税約305円を含めた金額(約485円)に対して消費税10%が課されるため、実質的に「たばこ税に対しても消費税がかかる」ことになります。
※3 当分の間税率(とうぶんのあいだぜいりつ)
ガソリン税(揮発油税・地方揮発油税)に適用されていた、本則税率に上乗せされる暫定的な税率のことです。 2000年代初期から20年以上続き「事実上の恒久措置」とされてきましたが、2025年12月31日をもって廃止されることが与野党6党で正式に合意しました。
具体的な税率(廃止前):
・揮発油税:本則 24.3円/L → 当分の間税率 48.6円/L(+24.3円)
・地方揮発油税:本則 4.4円/L → 当分の間税率 5.2円/L(+0.8円)
・合計:本則 28.7円/L → 当分の間税率 53.8円/L(+25.1円)
廃止後は本則税率28.7円/L中心の構成に戻る見込みです。
なお、軽油引取税の暫定税率(17.1円/L)も2026年4月1日に廃止予定です。
🔗 関連記事
📊参考文献・出典
- 国税庁「たばこ税・たばこ特別税」 - たばこ税の税率と内訳
- 財務省「税制改正の解説」 - 2026年度税制改正の動向
- 財務省「令和7年度の国民負担率を公表します」 - 国民負担率の見通し
- 資源エネルギー庁「揮発油税及び地方揮発油税の税率の特例」 - ガソリン税の当分の間税率
- 国税庁「No.1331 上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度」 - 配当所得の課税方式
- 国税庁「No.1250 配当所得があるとき(配当控除)」 - 配当控除の詳細
⛽ガソリン暫定税率の廃止について:
法案成立の公式報道
- 日本経済新聞「ガソリン減税法が成立、1リットル25.1円分 12月31日から適用」(2025年11月28日)
- 時事通信「ガソリン暫定税率、廃止法成立 12月31日実現、代替財源は先送り」(2025年11月28日)
政府公式情報
与野党合意の経緯
LifeTrixサイト管理担当。
長年の経験と専門知識を活かし、読者の皆様に分かりやすく情報をお届けし、安心してお取り組みいただけるよう誠心誠意サポートさせていただきます。
保有資格:
2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)
証券外務員一種
応用情報技術者(AP)


