【シン・供養トレンド】お墓の常識が変わる?~現代社会の課題から生まれた多様な供養のかたち~
承継者問題、経済的負担、価値観の多様化…永代供養から樹木葬まで現代の供養を調査
少子高齢化や家族形態の変化を背景に、従来の「家単位」での墓の継承から、多様な供養方法への選択肢が広がっています。厚生労働省の統計によると、2022(令和4)年度の改葬件数は151,076件となっています。
本記事では、過去の記事「墓じまいガイド」を補完する形で、「墓じまい後」の供養方法について、法令や自治体情報、最新の価格調査に基づいて解説します。

あなたに合った供養方法を見つけよう
まずは、重視するポイントから最適な供養方法を絞り込んでみましょう。以下のツールで、あなたのニーズに合った選択肢を確認できます。
目次
- なぜ今、「「墓じまい」が増えているのか?
- 主要な供養方法の徹底比較
- 費用で比較する供養方法
- 未来の供養スタイル「手元供養」と「デジタル供養」
- 供養方法を選ぶときのチェックポイント
- よくある質問と回答
- まとめ:後悔しないための3つのポイント
【重要な免責事項】
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の契約条件や結果を保証するものではありません。供養方法の選択や契約に際しては、必ず墓地管理者、寺院、行政機関、石材店、行政書士などの専門家にご確認ください。また、法律や制度は変更される可能性があります。本記事の情報を利用して行った判断や行動により生じた損害について、当方は一切の責任を負いかねます。【重要な注意事項】
・価格情報は民間調査に基づく参考値です。地域や施設により大きく異なります
・法的取り扱いは自治体により独自ルールがある場合があります
・契約前に必ず現地見学と複数業者での見積もり比較を行ってください
・本記事では理解しやすさを優先し、一部の例外規定や詳細要件を省略しています
1. なぜ今、「墓じまい」が増えているのか?

「墓じまい」の増加は、単一の理由ではなく、社会構造や価値観の変化が複雑に絡み合った結果です。その背景にある主要な動機を解説します。これらの変化が、新しい供養方法への関心を高めています。
「墓じまい」とは
既存のお墓を整理し、遺骨を他の墓地や納骨堂等へ移すことです。正式には「改葬」と呼ばれ、市区町村長の許可が必要な法的手続きです。
※具体的な手続きや費用について、詳しくは過去記事「墓じまいガイド」を参考にしてください。
承継者問題
少子高齢化により、お墓を継ぐ人がいない、または将来いなくなるという不安が最も大きな理由です。
経済的負担
墓石の建立費用や年間管理料など、維持にかかる金銭的負担を次世代にかけたくないという考えが広がっています。
価値観の変化
「家」単位の供養から、「個」の意思を尊重する形へ。自然に還りたい、宗教に縛られたくないといった多様な価値観が生まれています。
2. 主要な供養方法の徹底比較

ここでは、墓じまい後の代表的な4つの供養方法について、費用、メリット・デメリット、そしてどんな人に向いているのかを比較します。
樹木葬
メリット
- ✓費用を抑えられる
- ✓承継者不要
- ✓自然豊かな環境
デメリット
- ✗遺骨を取り出せない場合がある
- ✗交通アクセスが不便なことも
- ✗親族の理解が得にくい場合も
自然を愛する故人の意思を尊重したい方、墓石の維持管理から解放されたい方
海洋散骨
メリット
- ✓費用が非常に安い
- ✓維持管理が一切不要
- ✓宗教に縛られない
デメリット
- ✗お墓(手を合わせる場所)がない
- ✗喪失感を抱く可能性
- ✗専門業者への依頼が必須
海を愛していた故人を自由な形で見送りたい方、従来の墓制にこだわらない方
永代供養墓
メリット
- ✓承継者不要で無縁墓にならない
- ✓管理や供養を任せられる
- ✓生前契約が可能
デメリット
- ✗一定期間後に合祀される
- ✗一度合祀すると遺骨は戻らない
- ✗親族とのトラブルの可能性
後継者に管理の負担をかけたくない方、将来の墓守の心配を解消したい方
納骨堂
メリット
- ✓交通アクセスが良い
- ✓天候に関わらずお参りできる
- ✓セキュリティが安心
デメリット
- ✗お墓参りの実感が湧きにくい
- ✗線香や供物に制限がある
- ✗簡素な見た目に抵抗がある人も
頻繁にお参りしたい方、都市部での利便性を重視する方、現代のライフスタイルに合わせたい方
主な供養方法の定義
■樹木葬
樹木や草花を墓標とする埋葬方法です。墓地として許可を受けた施設内で行われます。
■海洋散骨
火葬後の遺骨を粉末状にして海上に散布する葬送方法です。国の法令に明確な規定はありませんが、1991年の法務省見解では「葬送のための祭祀として節度をもって行われる限り違法ではない」とされています。自治体によっては独自の指針を設けている場合があるため、事前確認が必要です。
(例:神奈川県熱海市では「熱海市海洋散骨に関するガイドライン」により、事前届出や実施海域の制限を設けています。)
■永代供養
寺院や霊園が遺族に代わって継続的に管理・供養する仕組みです。これは管理方法の一つであり、樹木葬や納骨堂などの埋葬方法とは別の概念です。多くの場合、一定期間の個別安置後に合祀(他の遺骨と一緒に埋葬)に移行する契約となっています。
■納骨堂
屋内施設に遺骨を収蔵する方法です。墓地埋葬法の対象となり、自治体の許可と監督を受けた施設で行われます。
3. 費用で比較する供養方法

各供養方法の費用は、選択肢を決定する上で重要な要素です。以下のチャートは、一般的なお墓を含めた各方法の平均的な費用相場を示しています。これにより、経済的な側面から各選択肢を客観的に比較することができます。
以下の価格はすべて民間調査や事業者の公表情報に基づくものです。公的な価格統計は存在しません。
各供養方法の費用相場
■一般的なお墓
永代使用料や墓石代など、初期費用が高額になります。また、年間管理料(年間5,000円〜2万円程度)も継続してかかります。墓石の材質や大きさ、区画の立地によって費用は大きく変動するため、予算に応じた選択が重要です。
▶平均149.5万円(永代使用料・墓石費等の合計)
出典: 第15回 お墓の消費者全国実態調査(2024年)
▶価格範囲: 100万円〜350万円
お墓の費用相場はいくら?内訳・種類別の価格帯をわかりやすく解説 - ごくようば
お墓の値段はいくら?費用の相場や内訳、価格を決める要素を紹介 - お墓ガイド
■永代供養墓
埋葬方法により価格に大きな差があります。合祀型は最も安価ですが、一度埋葬すると遺骨を取り出すことができません。個別安置期間がある場合、期間終了後は合祀されるのが一般的です。
▶価格範囲: 10万〜150万円
出典: 永代供養墓をわかりやすく解説!費用・注意点・メリット・デメリットとは | お墓探しならライフドット
・合祀(ごうし)型:10万〜30万円
他の方の遺骨と一緒に埋葬されるため、費用が最も安価です。
・個別安置型・集合型:30万〜100万円
一定期間は個別に遺骨が安置されるため、合祀型よりも費用は高くなります。
・個人墓つき永代供養墓:70万〜150万円
従来の墓石を建てるスタイルで、高額になりがちです。
■樹木葬
公営や民営など運営主体により価格差があります。また、年間管理費の有無も施設により異なり、82.8%の樹木葬では年間管理費がかからないとされています。埋葬方法(合祀・集合・個別)により費用が大きく変わります。
▶平均価格: 63.7万円
出典: 第15回 お墓の消費者全国実態調査(2024年)
合祀型:5万円〜30万円
集合型:10万円〜60万円
個別型:20万円〜150万円
樹木葬の費用相場は63.7万円!値段の内訳と種類別の金額を紹介 - お墓ガイド
■納骨堂
タイプ(ロッカー型、仏壇型、自動搬送型など)や立地(都心部か郊外か)によって費用が大きく変動します。都心部の自動搬送式は高額になりがちですが、アクセスの良さがメリットです。
▶平均価格: 80.3万円(タイプにより変動)
出典: 納骨堂の費用相場は平均80.3万円!ロッカー式など種類別の価格や内訳を紹介 - お墓ガイド
ロッカー式:20万円~80万円
仏壇式:50万円~150万円
■海洋散骨(複数事業者の公開情報より)
複数の遺骨をまとめて散骨する「合同散骨」や、船を貸し切る「貸切散骨」など、プランによって費用に大きな差があります。自治体によっては独自の指針を設けている場合があるため、事前に確認が必要です。
▶価格範囲: 5万〜40万円
出典: 自分で海に散骨するのは違法?ルールや注意点、依頼する場合の費用も - 小さなお葬式
委託散骨(代行): 5万〜10万円
合同散骨: 10万〜20万円
貸切散骨: 15万〜40万円
海洋散骨の方法と費用について - 日比谷花壇のお葬式
■手元供養
シンプルな骨壺やペンダントは安価ですが、ダイヤモンドなど故人の遺骨から作る高価な加工品は、数十万円から数百万円になることもあります。
▶価格範囲: 1万円〜
出典: 手元供養とは?その費用やメリット・デメリットを解説 - アルゴダンザ
【⚠️価格情報に関する重要な注意⚠️】
・上記の価格はすべて民間調査や事業者の公表情報に基づく参考値です
・実際の費用は地域、施設、契約条件により大きく異なります
・契約前には必ず詳細な見積書を取得し、追加費用の有無を確認してください
・複数の施設・業者での比較検討を強く推奨します
4. 未来の供養スタイル「手元供養」と「デジタル供養」
手元供養・自宅墓
遺骨の一部をミニ骨壺やアクセサリーに加工し、自宅で保管するスタイル。いつでも故人を身近に感じられる安心感が支持され、市場は急速に拡大しています。「お墓参り」という儀式から、日々の生活の中での「語りかけ」へと供養の概念を転換させます。
デジタル供養
VR技術を使ったオンライン墓参りや、故人のデータを学習したAIとの対話など、デジタル技術を活用した新しい供養の形。物理的な制約を超えて故人を偲ぶことを可能にしますが、倫理的な課題(※)も指摘されており、今後の議論が注目されます。
※デジタル供養の課題
・故人の人格権やプライバシーの取り扱い
・デジタルデータの永続性や管理責任の問題
・AI技術による故人の「再現」の是非
・サービス提供事業者の継続性への懸念
手元供養について
手元供養とは、遺骨の全部または一部を自宅で保管し、供養することです。
⚠️重要⚠️手元供養を検討される方へ重要な注意
- 墓地埋葬法第4条では、墓地以外での埋葬・埋蔵を禁じています
- 一方で、自宅での「保管」を直接禁止する明文規定はありません、
ただし、以下の点にご注意ください:
• 遺骨は適切な環境で保管し、散逸や損壊を防ぐ必要があります
• 他人の遺骨を無断で取得・損壊・遺棄した場合は刑法第190条(死体等損壊罪)に抵触する可能性があります
• 親族間でも遺骨の取り扱いについては事前の合意が重要です
• 自治体によって解釈が異なる場合があるため、心配な場合は自治体や専門家へ事前に相談することをお勧めします
デジタル供養について
オンライン上での墓参りや追悼サービスなど、インターネットを活用した供養方法です。現在、各事業者がサービスを提供していますが、公的な評価や統計は整備されていません。
5. 供養方法を選ぶときのチェックポイント
最後に、供養方法を多角的に評価した一覧表を掲載します。各選択肢がどのような特性を持つのかを俯瞰的に把握し、最終的な意思決定の参考にしてください。
評価軸 | 費用 | 管理負担 | 承継者要否 | 場所の有無 | 感情的満足度 | 家族の受容度 |
---|---|---|---|---|---|---|
伝統的な墓 | ||||||
樹木葬 | ||||||
海洋散骨 | ||||||
永代供養墓 | ||||||
納骨堂 | ||||||
手元供養 |
供養方法を選ぶ際は、以下の点を個別に確認することが重要です:
- 初期費用と維持費用
- 継承者の必要性
- お参りする場所の有無
- 交通アクセス
- 契約期間と合祀時期
- 遺骨の取り出し可否
特に海洋散骨の場合、物理的なお参りの場所が残らないため、手元供養との併用を検討される方が多いのが実情です。
6.よくある質問と回答

Q1:樹木葬と永代供養は何が違いますか?
A:樹木葬は埋葬の方法(墓の種類)で、永代供養は寺院や霊園が継続的に管理する仕組み(管理方法)です。樹木葬でも永代供養契約のものが多数あります。
Q2:海洋散骨は法的に問題ありませんか?
A:墓地埋葬法に散骨を禁じる明文規定はありません。1991年の法務省見解では「葬送のための祭祀として節度をもって行われる限り違法ではない」とされています。ただし、自治体によっては独自の指針を設けている場合があるため、事前確認が必要です。
Q3:手元供養は法律上問題ありませんか?
A:墓地以外での埋葬・遺骨の埋蔵は禁止されています(墓地埋葬法第4条)。しかし、自宅での「保管」について明文で禁止する規定はありません。ただし、他人の遺骨を無断で取得・損壊・遺棄することは刑法に抵触する可能性があります。
Q4:改葬(墓じまい)の手続きは必要ですか?
A:既に埋葬された遺骨を他の墓地等へ移す場合は、市区町村長の改葬許可が必要です。これは法的に義務付けられた手続きです。
Q5:手元供養と他の供養方法を併用することは可能ですか?
A:可能です。遺骨の一部を手元供養とし、残りを樹木葬や永代供養墓に納めるという方法を選択される方もいます。ただし、分骨には改葬手続きが必要な場合がありますので、事前に確認してください。
7.まとめ:後悔しないための3つのポイント

① 契約内容を書面で確認する
- 契約期間
- 合祀される時期
- 遺骨の取り出し可否
- 費用の詳細な内訳
② 法的要件と自治体ルールを確認する
海洋散骨などは自治体によって独自の指針や要綱がある場合があります。事前に確認しましょう。
③ 価格は参考程度に留める
本記事の価格情報は民間調査や事業者情報に基づくものです。地域や施設によって大きく異なるため、必ず現地見学と複数の見積もり比較を行ってください。
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参考文献・出典
法律・制度・統計(公的情報)
- 令和4年度衛生行政報告例(改葬件数151,076件)
e-Stat 政府統計の総合窓口|第4章 生活衛生 6「埋葬及び火葬の死体・死胎数並びに改葬数」
厚生労働省|衛生行政報告例(総合案内) - 1997年「これからの墓地等の在り方を考える懇談会」議事要旨(法務省見解の紹介あり)
厚生労働省|第6回 議事要旨(1997年10月23日) - 東京都保健医療局「散骨に関する留意事項」
東京都保健医療局 - 墓地、埋葬等に関する法律
e-Gov法令検索
厚生労働省|墓地、埋葬等に関する法律の概要 - 民法第897条(祭祀承継)
e-Gov法令検索(民法) ※第897条はページ内検索で参照
価格・費用情報(民間調査)
一般墓の費用相場
墓じまいの費用相場
永代供養墓の費用・注意点
永代供養の費用相場
- みんなのお墓
永代供養の費用相場は?種類別に徹底解説
海洋散骨
複数の海洋散骨事業者の公開価格情報
その他
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